楽しく・おいしいアルコールを飲み続けたい! そのために知っておきたい「沈黙の臓器?と言われる肝臓の働き」
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新型コロナウイルス感染症も(令和5年5月~)5類感染症に移行し、かつてのような日常をとり戻しつつあります。また飲み会などアルコールを飲む機会が増えて二日酔いになる方もいるのではないでしょうか。アルコールはうまく付き合えば『百薬の長』と言われますが、毎日、飲み過ぎの生活を続けた場合には、たちまち代表的な脂肪肝・アルコール性肝障害・肝炎などの病気になります。さらに慢性化すればアルコール依存症、肝硬変など発症するリスクが高まります。そうなる前に自身の肝臓をいたわり、アルコールと上手く付き合える生活を送っていけるよう、肝臓とアルコールの関係についてお話をしていきたいと思います。
肝臓とは
肝臓はお腹の中心から右寄りに位置しており、ほぼ全体が肋骨に覆われています。強くて大きく成人では1~1.5kg 体重の約1/50に相当する人体最大の臓器になります。さらに驚くことに正常な肝臓であれば、肝臓の70%を手術で切除しても、再生能力があり半年後にはものと大きさに回復するとまで言われているのです。
肝臓の病気で出る症状
肝臓は、よほどのことがない限り音を上げない臓器と言われています。
たくさんの仕事を黙々とこなす肝臓は、病気で肝臓の70~80%程度の機能が失われても働き続けることができるといわれています。そのため病気になっても症状が表に出にくいことから、“沈黙の臓器”と言われています。だからこそ、以下のような症状が出ている場合にはすぐに医師へ相談してください。
・倦怠感
・吐き気
・腹痛
・黄疸
・腹水
などです。
セルフチェック
ただ、こうなる前にセルフチェックもあります。
・便が白っぽい
・尿が黄褐色(ふだんより黄色みが強くて茶系色)
・乳首が大きくなった(胸が大きくなった)
・右わき腹の痛み
・ぼーっとしている
・眠たくなる
などですが、定期的に健診を受けている方は、肝機能の採血項目としてALT・AST・γ―GTP、脂肪肝があるなどの値や情報も参考にしてください。
肝臓の働き
私たちの身体を守ってくれている肝臓には500以上の機能があります。その中でも大切な役割を4つご紹介します
- 『解毒』
アルコール・薬 老廃物などの有害物質を分解して、私たちの身体に影響を及ぼさないよう無毒化にしてくれます。 - 『代謝』
食べ物からとった糖質・タンパク質・脂肪を体内で貯蔵し必要な時にエネルギーとして供給します - 『胆汁の生成・分泌』
肝臓でつくられた老廃物を流す胆汁を生成・分泌します - 『エネルギーの貯蔵』
脳の主なエネルギー源であるブドウ糖(グルコース)を供給しているのが肝臓です。ブドウ糖をグリコーゲンとして備蓄しています
再生能力
肝臓は再生能力の強い臓器ですが、アルコールや脂肪肝などの炎症の状態が長く続くと元には戻らなくなるため日頃から注意が必要になります。
大量のアルコールを飲み続けるとどうなる?
まず、体内に入ったアルコールはどのようになるかご存じですか?
ビール1本のアルコールを肝臓で解毒するには、3時間程度かかります。口からはいったアルコールは胃から20%腸から80%吸収されて肝臓で処理をされます。肝臓内でADH(アルコール脱水素酵素)やMEOS(ミクロゾームエタノール酸化系)により分解をされアセトアルデヒドになります。有害な物質であるアセトアルデヒドは、頭痛や嘔気などを引き起こします。
そして、ALDH(アルデヒド脱水素酵素)により無害である酢酸へと分解されます。そして、尿や汗 呼気に含まれて外に排出されます。しかし、アルコールの分解がうまくいかずアセトアルデヒドのまま残ってしまうと、これが二日酔いの原因になります。
大量のアルコールを飲み続けると、肝臓内の中性脂肪の合成が高まり、蓄積してアルコール性脂肪肝となります。さらに、飲酒を続けているとアルコール性肝炎・肝硬変・肝臓がんへ病状が進行します。また短時間にアルコールを大量摂取したとき、分解できなかったアルコールが血液を介して脳に達し、脳内の神経細胞を麻痺させるのが、急性アルコール中毒と言われています。その症状は、重症化すれば昏睡や呼吸停止となり死に至るケースもあるので、適度な飲酒を意識しましょう。
また、飲めない体質の人は周囲の人に事前に伝えておくのがよいでしょう。過度なアルコールは依存症という精神的な病気の側面ももっています。
ナースが提案するアルコールと相性のいいおつまみ
お酒だけ飲んでいると、特に空腹時にはすぐにアルコールの吸収が早まります。それでは、胃腸の粘膜を直撃して荒れてしまいますし肝臓にも負担がかかるので、何かおつまみが欲しくなります。
おいしいお酒と油っぽい食べ物を一緒に食べると、お酒が次々と進みますが、脂質の高い食べ物の食べ過ぎは消化をするのに負担がかかります。
相性のよいおつまみは、食物繊維が多い『キャベツ』、アルコールの分解を助けてくれる『枝豆』、胃粘膜を守る『とろろ』、グルタチオンの前駆体になる『トマト』などもちろん野菜が中心ですが、『あたりめ』も肝臓をサポートするタウリンが含めれていて二日酔い予防に効果的、『チョコレート』は肝機能改善、そして『ウコン』です。ウコンは肝臓を刺激してくれるので肝機能の底上げにつながります。
とにかく水分(真水)を補給してデトックス
体内の老廃物を早く外に出すことが大切です。利尿を促すためにはやはり水分。
「水分は1日1.5L~2L飲みましょう!」とよく聞きますが意識をしないとなかなか適量の摂取はできません。
(※腎臓や心臓の疾患などの持病をお持ちの方、また主治医からの指示で水分制限のある方は、一度かかりつけ医にご相相談ください)
痛風の方も水分摂取により症状が軽減されることがあります。ただし、あまりにも意識をして水分を摂ろうとして食事前などに飲むと胃酸が薄くなりますので胃に負担がかかります。
水分摂取のよいタイミングとしては、
・起床時
・寝る前
・スポーツ中及びその前後
・入浴前後
・喉が渇く前
などが適当です。特に高齢になると喉が渇くという意識を感じにくくなります。熱中症対策としても喉の渇く前に適宜水分をとることが大切です。
さいごに肝臓の解毒作用
最大の解毒作用をもつ臓器である肝臓ですが、最も負担をかけているのはアルコールになります。アルコールは極めて毒性が高いため、日常的にアルコールを飲んでいると肝臓に余裕がなくなり機能が低下していきます。
アルコール以外にも、さまざまな有害物質が体内に混入してきます。その体内に入った毒素などは肝臓で解毒をされますが、その解毒作用として働くのがグルタチオンです。
人の細胞内に存在している『グルタチオン』は肝臓によって生成され、解毒作用に欠かせない成分になります。他には抗酸化作用があり、身体のサビとなる活性酸素を抑えたり免疫力を高めてくれる働きがあります。話は少しそれますが、シミの原因となる過剰なメラニン生成を抑える働きもあり美白・アンチエイジング・美肌のサポートをしてくれます。
ですが、体内のグルタチオンだけでは年齢とともに低下し20歳がピークと言われています。そのため何らかの補充をしていくことが必要になってきます。
例えば、グルタチオンの内服薬や点滴療法がありますが、実は体内には数十パーセント程度しか留まることができないといわれています。したがってグルタチオンを多く含む食品で体に補充することで健康維持につながります。
体内のグルタチオンを増やす
先にも説明しましたが、外から薬で摂取しても体内に完全に留まることが難しいため、体内のグルタチオン生成を促すのが最も効果的です。その役割を果たしてくれる成分がハイチオンエキスです。ハイチオンエキスは美肌で有名ですが、肝臓の解毒を助けることで二次的に透明感のある肌になるというのが簡単な理屈です。お酒も好きだし肌荒れも困るなんていう女性には一石二鳥の成分です。
今回、沈黙の臓器“肝臓”についてお話をしてきましたが、お酒を末永く楽しむためにも、時には「休肝日」をつくり肝臓の定休日をつくってあげる事も大切です。また、肝臓は物言わぬ臓器だけに自身で自分の肝臓を労わってほしいと思います。