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【2021年最新情報】マザーキラー「子宮頸がん」男性にも関係あるの?がんが移る!?

【2021年最新情報】マザーキラー「子宮頸がん」男性にも関係あるの?がんが移る!?

コロナ禍ですが、がん検診できていますか?がんは人に移ったりはしませんよね。ウイルスが主な原因である子宮頸がんでは、移ってしまうこと、男性の感染予防も大切であることが分かってきました。

「子宮頸がん」の基礎知識

女性の子宮

子宮は、女性の骨盤内にあり、妊娠した際に胎児を育てる器官です。
成人女性で鶏卵程度の大きさの臓器で、筋肉でできています。子宮は、袋状の「子宮体部(たいぶ)」とその下の部分にある筒状の「子宮頸部(けいぶ)」に分けられます。子宮体部の左右からは卵管が出ていて、子宮頸部の下は腟(ちつ)につながっています。

子宮頸がんとは?

子宮頸部から発生するがんです。
子宮の入り口付近に発生することが多いです。そのため、婦人科の診察で発見されやすいがんではありますが、進行すると治療が非常に難しいため、早期発見が極めて重要ながんと言えます。がん細胞の種類としては、扁平上皮がんが約7割、腺がんが約2割、その他前がん病変の状態でも治療が必要です。子宮頸がんは、進行すると骨盤の中のリンパ節や血管・リンパ管を通って子宮から遠い部位(肺など)に転移したり、子宮を支えている靱帯を伝って広がったりすることがあります。

子宮頸がんの症状

子宮頸がんは、がんになる前の状態を何年か経てからがんになります。この時期には自覚症状がありません。子宮頸がんへ進行すると、不正出血やおりものに異常が出始めます。さらに進むと痛みが出現し膣以外から出血したりすることもあります。異変に気付いてからではがんがかなり進行している恐れがあるということです。定期的な検診が最も大切です。そして少しでも気になる症状があるときは、ためらわずに婦人科を受診しましょう。

前がん病変の時期:数年間
自覚症状なし

子宮頸がんへ進行
不正出血や性交時の出血
濃い茶色や膿(うみ)のようなおりものの増加
水っぽいおりものや粘液の増加

子宮頸がんがさらに進行
下腹部や腰の痛み
尿や便に血が混じる

子宮頸がんの原因

子宮頸がんの95%以上でHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因であることが明らかになっています。HPVは性的な接触の中で感染します。通常、免疫によって排除されるはずのHPVですが、感染が続くと子宮頸がん(その他のがんの因子にもなりえます)が発生すると考えられています。また、喫煙も危険因子とされています。

日本における子宮頸がん患者

日本では年間約1万1000人が発症し、そのうち約3000人の女性が亡くなっています。若年層に多く、20代後半から増加して、40代でピーク、その後は横ばいです。多くの先進国では子宮頸がんの死亡する人の数は減少しており、世界的に見ても、検診とHPVワクチンの普及で減少の見通しとなっている中、日本では、患者数、死亡者数ともに増加しているのが現状です。特に若い世代の死亡率が高く、働き盛りの女性や子育て世代の女性が、子宮頸がんによって、妊娠ができなくなったり幼い子どもを残して命を失ったりしているわが国の現状から、「マザーキラー」とも呼ばれています。

子宮頸がんは子どもに移る

2021年1月に、国立研究開発法人国立がん研究センターより発表された最新情報です。子宮頸がんを発症した母親から生まれた子どもへがん細胞が移行したというのです。小児がん患者(肺がん)のがん細胞を調べたところ、母親の子宮頸がんの原因となる同じタイプのヒトパピローマウイルスの遺伝子が検出されました。
いつ、どのように移ったのか?
それは、出産時でした。産声をあげたとき、母親の子宮頸がん細胞が混じった羊水を肺に吸い込み、そのがん細胞が肺に移行したという機序が明らかとなりました。一方で、この肺がんを発症した子どもの治療は劇的な効果がみられたことも同時に報告されています。しかし、母子を守るためには、何より子宮頸がんの予防、早期発見することが重要であることが改めて分かります。


引用元:「母から子どもの肺へのがん細胞移行」国立研究開発法人国立がん研究センター

子宮頸がんは予防も早期発見もできる!

子宮頸がんの予防はHPVワクチン

がん予防には禁煙や節度のある飲酒、バランスのよい食事や身体活動、そしてHPV感染予防が効果的です。
HPVにはワクチンがあります。初めての性交渉前に接種することが望ましいとされ、9歳から接種が可能です。200種を超えるHPVの型のうち、子宮頸がんの発生と関連が深い一部の型のHPV感染を予防するワクチンが接種可能になっています。
しかし、日本では、ワクチンによる副反応(原因不明の慢性疼痛など)の報告があり、勧奨中止となっています。
一方、先進国では積極的に予防接種がすすんでいます。世界でもっともHPVワクチンの普及が進んでいるのはオーストラリアで、接種率は15歳の女子で80%近く、15歳の男子では75%です。
日本では、HPVワクチンの勧奨中止の影響から接種率が激減し、1%未満にまで落ち込みました。大阪大チームはワクチン接種で避けられたはずの患者が計1万7千人、死者が計4千人発生するとの予測も発表しています。
HPVワクチンには相談窓口があります。副反応についても調査研究が進められています。正しい知識を持って、接種の是非を一人ひとりが考えていけるとよいですね。

実は男性のがんも予防するワクチンです!

HPVは、もちろん男性も感染します。そして、HPV感染により、肛門がんや陰茎がん、舌がん、咽頭がんなどを発症する可能性があるのです。とくに近年、先進国では咽頭がんの広がりが観察されており、HPVを原因とするこのがんの25%近くは男性であることが明らかになっています。実際に、海外では女性のためワクチンという認識ではなく、双方に移さないために男性も接種を勧奨され始めています。現在すでに導入しているのは、前述のオーストラリアのほか「アルゼンチン、イギリス、アメリカ、カナダ、スイス、イタリア、オーストリア、ノルウェーなど約20ヶ国にのぼり、フランスも2021年1月から11~14歳の男子への接種を推奨し始める予定です。男性のHPVワクチン接種のメリットは二つあります。一つは男性から女性へのHPV感染を減らすこと、もう一つは、男性自身の感染を防ぐことです。男性も大切な人のためだけでなく、自身のためにワクチン接種が必要ということです。

定期検診は必ず!

ワクチンを接種したとしても、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。20歳以上は1年に1回、子宮頸がん検診を受けましょう。ほとんどの区市町村では、検診費用を公費で負担しており、一部の自己負担で受けることができます。お住まいの自治体の情報を確認しましょう。

一般的な検診の内容
問診 不正性器出血などの症状の有無、妊娠および分娩歴、月経の症状、過去の検診受診歴など
視診 膣鏡を膣内に挿入し、子宮頸部を観察します。
おりものの状態や炎症の有無を目で確認します。
内診・細胞診 子宮頸部(子宮の入り口)を、専用の器具(先にブラシが付いている)で擦って細胞を採り、
異常な細胞を顕微鏡で調べる検査です。
※月経(生理)中は避けて検査を受ける必要があります

※異常があった場合には精密検査へと進みます。

参考
国立研究開発法人国立がん研究センター「母親の子宮頸がんが子どもに移行する現象を発見
国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん
公益社団法人日本産科婦人科学会 「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために