「活性酸素」とにかくなくせば良い?それは違います
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日差しが照り付ける季節になってきました。
コロナ禍ということもあり、オープンエアを求め、この夏は解放感のある場所で過ごそうと予定している方もいるのではないでしょうか。
ここで気になるのは「紫外線」ですね。
シミやシワも気になるところです。
このシミやシワをもたらすとされる「活性酸素」という言葉、皆さん一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。そして、活性酸素を減らすべく「抗酸化」が注目を集めています。
生きていく上で絶対に避けられない「活性酸素」。活性酸素から正しく身体を守るためにも今一度その理解を深めてみませんか?
「活性酸素」とは?
「活性酸素」とは、酸素が通常よりも活性化された状態を指します。
わたしたちは酸素なしには生きていけません。普段吸っている空気中(大気)には、約21%の酸素が含まれています。わたしたちの身体は摂り入れた栄養素をエネルギーに変えていきますが、そのために、全身の細胞内のミトコンドリアで酸素を使って酸化(栄養素を燃やす)させています。酸化の過程で電子の受け渡しの際に酸素が不安定な形となり、活性酸素に変わることがあります。活性酸素はもともとの酸素よりも、他の分子を酸化する能力が高い(活性化)という特徴があります。取り込んだ酸素のうち、おおよそ2%が活性酸素になると考えられています。
敵にも味方にもなる活性酸素
「活性酸素は身体によくない」「活性酸素をなくしましょう」という声を聞いたことがある方がいると思います。しかし、活性酸素にも重要な役割があるのです。
白血球から産生される活性酸素(スーパーオキシドや過酸化水素など)はその強い毒性で細菌を破壊してくれているのです。よく傷口に使われるオキシドールはご存知ですか?塗ると一瞬にして泡を出して最近を殺してくれますよね、これと同じ原理です。さらに、細胞間の情報伝達や、排卵、受精、細胞の分化・アポトーシス(細胞の増殖調整)などの生理活性物質としても利用されています。
一方で、活性酸素が過剰になるとその強い毒性で細胞を傷つけます。
この細胞が障害された状態を、「サビ」と呼ばれたりします。免疫系に重要な役割を持つ活性酸素ですが、過剰になった途端に免疫免疫力を低下させてしまうのです。そして、過剰な活性酸素によって引き起こされるさまざまな影響。
老化、シミやしわ、がん、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、胃潰瘍、肺炎、脳血管性痴呆症、アルツハイマー型痴呆症、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、白内障など・・・万病のもととも言われています
そのため、微量な活性酸素は保ち、活性酸素が過剰になるのを予防する。このバランスが大切になります。安易に活性酸素をなくせばよいという考え方も禁物なのです。
わたしたちが本来持っている活性酸素調節機能
調節が重要な活性酸素ですが、もともと私たちの身体には、不要な活性酸素を除去する機能が備わっています。常に全身で発生する活性酸素ですが、私たちが元気なのは、この抗酸化機構が備わっているからなのです。
具体的には、活性酸素の産生を抑えたり、活性酸素から受けたダメージを修復・再生を促してくれたりしています。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素がそれを担っています。そして、食べ物から取り入れたビタミンやポリフェノール、カルテノイドなど抗酸化パワーがある成分もそれを助けてくれます。
しかし、活性酸素を分解してくれるSOD酵素は、20歳をピークに、分泌が低下し、40代以降は急降下し、60代で30%、80代では10%ほどまでに低下します。加齢に伴い抗酸化能が低下し、作られる活性酸素に対する抗酸化能とのバランスが崩れていくのです。その結果、様々な老化現象や疾患の発症といった、有害事象が発生します。過剰な活性酸素より人体に有害な状態であることを「酸化ストレス」と呼びます。
いかに酸化ストレスの状態を作り出さないか、余分な活性酸素を作り出さないように、また、抗酸化能力を補うかが健康的な身体づくりに最も重要というわけです。
「酸化ストレス」を高める原因とは?
体内で生み出される活性酸素ですが、生きる上で必ず発生する以外でも活性酸素が発生します。加齢にともない抗酸化能が低下することに加え、「酸化ストレス」を引き起こすリスク因子には、ストレス、睡眠不足、喫煙や飲酒、食物添加物、薬剤、酸化された物質、紫外線、放射線、大気汚染など・・・日々の生活の中でさらされているものばかりです。
コロナ禍では“自覚のないストレス”という言葉も生まれています。世界が変わったいま、酸化ストレスにもさらされやすい環境であるのです。
細胞の障害「サビ」るとどうなるの?疾患と活性酸素
細胞が傷つくと一体何が起こるのか、代表的なものとしては、がん 心血管疾患 生活習慣病(動脈硬化 高血圧 糖尿病など) 認知症 ・・・ それぞれメカニズムを説明します。
1.がん
蛋自質や脂質も活性酸素の標的になります。
そのため、細胞の核、DNAが傷害されたり、複製に失敗したりすることで、これががんの発端になります。
2.生活習慣病
LDLコレステロールが酸化されると血管の老化を促進します。
そして、動脈硬化を起こした血管には、酸化された脂質が蓄積し、血管の内腔が狭くなります。血流が悪くなり、血管がつまったり破れたりすれば、心筋梗塞や脳卒中につながります。さらに、酸化された糖とタンパク質が結合し、異常な糖化タンパク質が増えることで、糖尿病にもつながることがわかっています。
3.認知症
アルツハイマー病やパーキンソン病など、高齢者に多い脳の病気でも、酸化したたんぱく質などが蓄積していることがわかっています
例えば、アミノ酸の一種であるホモシステインは酸化してホモシステイン酸になります。ホモシステイン酸は加齢マーカーのひとつと言われています。神経毒であり、脳細胞にダメージを与え、認知症発症の要因と考えられており、実際に認知機能との相関関係が指摘されています。
4.老化
老化は活性酸素によって身体の細胞や組織が酸化して機能が衰えると考えられております。
血管や筋肉、骨、脳など体中で酸化が進み、老化現象が起こります。活性酸素は厄介なことに、さまざまな物質とくっつきやすく、紫外線に曝露されている皮膚にも影響を受けやすいと言われています。活性酸素によって皮膚細胞が酸化すると、メラニン色素を誘発させ、シミの原因となります。皮脂の酸化による刺激は、ニキビの炎症を招き、そして、コラーゲンやエラスチンを破壊し、しわ、たるみ、肌の老化を促進してしまうのです。
美容と健康のためにも、活性酸素をうまくコントロールすることが大切になります。
次回は、どのようにコントロールすればよいか?
その対策をお届けします!
参考文献
日本老化制御研究所「酸化ストレス/活性酸素種(ROS)とは?」
健康長寿ネット「酸化ストレス」
OMRON「活性酸素って何?」
e-ヘルスネット「活性酸素と酸化ストレス」
健康長寿ネット「抗酸化による老化防止の効果」