がんについて②
がんの治療とその後の検査
がんの主な治療法として、手術療法、薬物療法、放射線療法があります。
がんの治療と言うと長期間の入院が必要で、仕事との両立は困難であると言うイメージが強かったのではないでしょうか。しかし最近では外来に通院しながら放射線治療や抗がん剤治療を行っている人がたくさんいます。手術は基本的に入院が必要な治療となりますが、内視鏡手術など身体の負担が少ない方法の普及により、過去に比べてどんどん入院日数も短くなって来ています。
こういった急性期治療によりがんを取り除いた後は、定期的に外来に通って検診を受け、体調の変化や再発・転移の有無など経過を観察していきます。がんの種類や進行度によって検診の間隔や検査内容は多少異なりますが、一般的には3か月後と6か月後に1回ずつ行い、その後3年目までは3カ月から半年ごとに1回、4~5年目からは半年から年1回のペースで定期的に検査を行います。
ただし、受診の間隔は患者さん1人ひとりの治療の内容、病気の進行状態などを考慮して担当医が判断しますので、同じ治療を受けた患者さんでも定期受診の間隔が同じとは限りません。
定期検診の内容
がんの種類や進行度にもよりますが、腫瘍マーカー、胸部X線、超音波、CT、内視鏡などの検査が一般的です。
腫瘍マーカー検査は、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、前立腺がん、乳がん、子宮頸がんなどは採血で、膀胱がんでは採尿によって検査を行います。腫瘍マーカーはがん細胞の数やがん細胞が作る物質の量が多くなると値が高くなるため、がん診断の補助、治療の効果、再発や転移が無いかを調べるために行われます。しかし肝臓や腎臓の機能障害、飲酒や喫煙などの生活習慣、飲んでいる薬、がん以外の病気などの影響により高い値になることもあります。反対にがんがあっても値が高く出ないこともあるので、腫瘍マーカーの値だけでがんの再発は確定できません。また、全てのがんで特定の腫瘍マーカーが見つかっているわけではありません。
現在見つかっている代表的な腫瘍マーカーは以下の通りです。
非小細胞肺がん:CYFRA21-1、CEA、SLX、CA125、SCC
小細胞肺がん:NSE、ProGRP
食道がん:SCC、CEA
胃がん:CEA、CA19-9
大腸がん:CEA、CA19-9、p53抗体
肝細胞がん:AFP、PIVKA-Ⅱ、AFP-L3
胆道がん:CA19-9、CEA
膵臓がん:CA19-9、Span-1、DUPAN-2、CEA、CA50
膀胱がん:NMP22、BTA
前立腺がん:PSA
乳がん:CEA、CA15-3
子宮頸がん:SCC、CA125、CEA
卵巣がん:CA125
がんの再発
がんの治療では、主にがんを取り除いたり、小さくしたりして治療します。
目に見えるがんを手術で全て取り除けたとしても、目には見えない大きさの微細ながん組織が残ったり、見えないところで転移があったりするとそれが成長することで再発が生じます。また、抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療には、がんを小さくしたり、場合によっては消したりする効果が期待できますが、治療終了後に再びがんが大きくなることで再発してしまうことがあります。再発が懸念されるときは、がんを取り除く・小さくする治療のほか、再発予防のための治療が行われますが、それでも再発してしまうときもあります。
また治療後、再発・転移とは別に新たながんである「二次がん」ができることもあります。そのため、がんの治療を受けた後でも自治体や勤務先、医療機関等の定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
再発するタイミング
がんが再発する確率の高い期間は、多くのがんで診断から5年以内といわれています。ただし、5年再発がなければ今後も絶対に再発しないというわけではなく、あくまで5年経過すると再発の確率が下がるということです。
がんの種類によっては、あらかじめ再発のリスクが分かっているものもあります。たとえば、肝臓がんの一種である“肝細胞がん”は、手術から5年以内に再発する確率が70〜80%と高確率で、再発のほとんどは同じ肝臓内で生じます。肝細胞がんの多くは肝炎ウイルスによる慢性肝炎・肝硬変などが影響しており、これが治らない限り再発のリスクがなくならないといわれています。
また、がんによっては、5年以上経過しても再発のリスクが高いものもあります。たとえば、乳がんでは手術から10年間におよそ30%の患者さんで再発するといわれています。そのため乳がんの場合は定期検診が他のがんに比べて長期間となり、術後10年までは3~6ヵ月ごと、それ以降は半年から1年ごとが推奨されています。
セカンドオピニオンについて
大学病院など大規模な施設では、患者さんが「かかりたくてもどこに行ったら良いか分からない」「外来の予約が中々取れない」「紹介状が無くて診てもらえなかった」などのトラブルが発生しています。ご自身の体調で何かおかしいな?と感じることがあっても、わざわざ予約するほどではないかと我慢してしまったり、待ち時間が長くて受診がおっくうになってしまうこともあるでしょう。
急性期病院においてももちろん術後・治療後のアフターフォローの体制は整えられています。しかし、どうしても病院の性質上、急性期治療が優先されてしまい、治療の終了した患者さんの対応に手が緩んでしまうのは否めません。
そんな時に考えておきたいのがセカンドオピニオンです。気軽に受診できる規模・距離でかかりつけの病院を見つけておけば、ちょっとしたことでも遠慮なく相談することができるでしょう。必要であればきちんと検査を受けることができ、再発や合併症の徴候を早期発見できる可能性も上がります。
病院で受ける検査は、その場での結果はもちろんですが、過去との比較も重要です。採血の結果は書面で貰っておくと、緊急時などで初めての病院を受診した時にも過去のデータと比較が可能になるためおすすめです。
こんなときは早めに受診を
体重が急激に減った、創口から血や浸出液が出ている、38度以上の高熱が続く、食欲のない日が何日も続く、息苦しさなどの症状がある場合は早めに受診し、医師に相談しましょう。