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がんコラム④

がんコラム④

最近の研究で、アミノ酸の一種であるメチオニンががん細胞の増殖に関わっていることが分かってきました。

メチオニンとは

メチオニンとは硫黄を含んだ含硫アミノ酸で、必須アミノ酸のひとつです。
必須アミノ酸とは、たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうち、体内で合成することができない9種類のアミノ酸のことで、欠乏すると血液や筋肉・骨などが作れなくなります。
体内で合成することができないので食品から摂取しなければならず、鶏肉・牛肉・羊肉などの肉類や、マグロ、カツオなどの魚介類、牛乳やチーズなどの乳製品、豆腐・納豆などの豆類や加工食品、ナッツ類や全粒小麦などに含まれています。

メチオニンの効果

体内では、メチオニンはアレルギーを引き起こすヒスタミンの血中濃度を低下させることで、アレルギー症状を緩和させる作用を持っています。
肝臓においては有害金属などの毒素や老廃物の代謝を促進する効果があり、医療現場ではおもに薬物中毒解毒の解毒薬として使用されています。
また、脂質を乳化させることで体外に排出しやすくする働きもあるため、脂肪肝の薬として利用されることもあります。
その他にも、うつ病や統合失調症を改善する効果や、老化防止効果、育毛や発毛にも効果があるとされています。

メチオニンとがんの関係

これだけ人体において役に立つ働きをしているメチオニンなのですが、がん患者さんにとっては少し話が異なります。
メチオニンはがん細胞の増殖に不可欠な因子であり、“がんのメチオニン依存”として知られています。本来であれば、体を作るために必要な必須アミノ酸でありながら、がんになるとがん細胞への栄養を絶つためにメチオニンの摂取制限が望まれます。

これまでに実施されたマウスの研究で、食餌の中のメチオニンの摂取量を制限する実験が行われました。すると、腫瘍の増殖が抑えられ、化学療法や放射線療法の治療中における症状の経過や結果が改善されることが明らかになっています。
また、ヒトにおける証明研究においても、食餌に含まれるメチオニンの量を低下させることで代謝に及ぶ効果は、マウスの場合と同様のものであり、低メチオニン食に対する反応がヒトとマウスの間で同じ反応である可能性が示唆されています。
以上のことから、がん細胞へのメチオニン供給を制限することでがんの増殖抑制効果が期待できるのです。

メチオニン制限食とは

低メチオニン食とは、低たんぱく質食を心がけることとほぼ同様になります。
メチオニン研究の第一人者であるアメリカのホフマン先生はメチオニンの摂取量を体重1㎏あたり2mgという値を提唱しています。
これは、あくまでもがんの増殖を抑えるための推奨値となります。
50㎏の体重の方は2㎎×50kgとして、1日100mgが推奨値となりますが、この数値は大変厳しいメチオニン制限を示す値です。

たとえば、ささみソテー100gではメチオニンの含有は1000mgとなります。
健康的に植物性のタンパク質が豊富な豆類にもメチオニンは豊富に含有されています。
他にもメチオニンが豊富に含まれる食材として以下のものがあります。

生の豆1cup(160g)にメチオニン130mg
小豆1cup(230g)にメチオニン182mg
アボカド150gにメチオニン57mg
卵1個に132mg
ヨーグルト1個にメチオニン約280mg
肉全般85gにメチオニン650~700mg
魚全般85gにメチオニン450~650mg

上記の食材は私たちが日常的に口にしている食材が多く、これらを制限して生活していくのはなかなか大変なことです。
海外ではすでに経口のメチオニン代謝酵素が一般に販売されています。サプリメントとして摂取すると体内のメチオニンを8割も制限することができ、食事制限によるストレスを受けることなくメチオニン制限を行うことができるそうです。

葉酸にも要注意

せっかくメチオニン制限を行うのであれば、葉酸の含有量に注意するのも重要です。
本来メチオニンは体内では作られないのですが、細胞内で一旦使用されたメチオニンをリサイクルする働きがあります。
この働きをするのが細胞内にあるメチオニン・サルベージ経路というもので、メチオニンをリサイクルする際に必要になるのが葉酸なのです。
がん患者さんの中には、葉酸が多いものを食べないようにしている方もいらっしゃいます。
ちなみに、イチゴは100g中12mgしかメチオニンが含まれてないのですが、葉酸は90ug と豊富に含まれているそうです。

がんとCBD

がんに対するCBDの作用は、現在世界中で研究されています。
CBDの研究が始まってから日が浅く、まだヒトによる臨床試験は少ないですが、ここ数年で細胞レベルや動物実験で抗腫瘍効果を示す論文が多数発表されています。
具体的には腫瘍細胞の増殖抑制、浸潤抑制、転移抑制、などです。
がんそのものに対する効果に加え、CBDには抗炎症作用や鎮痛作用、安眠効果・精神安定効果など多種多様な効能があるとされています。
これらの効果により、がんや治療に伴う不快症状(悪心、疼痛、食欲減退、疲労感)やストレスを緩和させることが期待されています。